2001.10.24 開催:第15回ISIT技術セミナー
■日時
平成13(2001)年10月24日(水)13:30~17:30
■会場
福岡SRPセンタービル 2階 SRPホール
福岡市早良区百道浜2-1-22
■テーマ/講師
「インターネットの世界を広げる モバイルIP」
・第1部「インターネットにおける移動体通信プロトコル」
寺岡 文男 氏 慶應義塾大学 理工学部情報工学科 教授
・第2部「世界水泳大会における高速インターネット実証実験報告」
笠原 義晃 氏 九州大学 情報基盤センター研究部 助手
■内容
第1部「インターネットにおける移動体通信プロトコル」
ノートPCやPDAなどの携帯端末を持ち歩き、行く先々でインターネットに接続して利用するユーザが増加しています。携帯端末がインターネット内を移動するとIPアドレスが変化してしまい、継続的な通信ができません。また、携帯端末を指定して通信を開始することができません。Mobile IPはこのような問題を解決するプロトコルであり、IPv4用のMobile IPは1996年にRFC2002として標準化されました。IPv6用のMobile IPは現在標準化作業中です。
また、無線通信環境において微小セル間を携帯端末が高速に移動する場合、Mobile IPでは移動登録のオーバーヘッドが大きいため、パケットロスが生じる可能性があります。そこでハンドオフをスムーズに行うためのプロトコルの標準化も進められています。
一方、我々はネットワークアーキテクチャの観点から考え直し、移動体通信のみならず、マルチホーミングやセキュリティの問題解決にも有効であるLIN6というプロトコルを提案しています。
本講演では、「なぜ Mobile IPが必要なのか」、「Mobile IPv4/v6の仕組み」、「スムーズハンドオフプロトコル」、「LIN6の考え方およびその仕組み」について解説しました。
第2部「世界水泳大会における高速インターネット実証実験報告」
さる 2001年7月16日から29日にかけて、福岡市において「世界水泳選手権大会福岡2001」が開催されました。ISITと九州ギガポッププロジェクト(QGPOP)はこの大会において、報道および大会関係者に対して高速ネットワーク環境を提供する実証実験を実施しました。モバイルIP技術を利用した無線LAN環境の提供や、マルチキャスト技術を利用した各会場間での監視用動画像交換などについて実験しました。
本講演ではこの実験について報告し、またこの実験で利用された無線LANシステムのデモンストレーションを行いました。
■講師プロフィール
寺岡 文男 氏
1984年 慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了
同年 キヤノン株式会社入社
1988年 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所入社
2001年4月から現職
博士(工学)
1991年 日本ソフトウェア科学会高橋奨励賞受賞
1993年 元岡記念賞受賞
2001年 情報処理学会論文誌平成12年度論文賞受賞
コンピュータネットワーク、オペレーティングシステム、分散システム等の研究に従事。
特に移動透過性を提供するプロトコルVIP (Virtual IP)の開発を通してIETFのMobile IP分科会の活動に貢献。
2000年5月から情報処理学会理事
(著書) 「ワイヤレスLANアーキテクチャ」(共著、共立出版)
(監訳) 「詳解 Mobile IP」(共監訳、プレンティスホール出版)
ACM, IEEE, 日本ソフトウェア科学会、情報処理学会、電子情報通信学会各会員。
笠原 義晃 氏
1996年 九州大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程卒業 博士(工学)
九州大学の学内ネットワーク管理・運用に従事し、ネットワーク管理・運用技術に関する研究に従事。
情報処理学会、電子情報通信学会各会員。WIDE プロジェクトメンバー。
QGPOPメンバー
■デモンストレーション
「無線LANシステム」
大森 幹之 氏
九州大学大学院 システム情報科学府 情報工学専攻
QGPOPメンバー
[参考]九州ギガポッププロジェクト(QGPOP)
九州ギガポッププロジェクトでは地域の産学官が連携し,共同研究開発活動を支援するネットワークインフラを整備しました。国内外の高速研究開発型バックボーンと接続して高速インターネット技術や高度アプリケーションに関する研究開発を進めています。
[QGPOP Web site URL]http://www.qgpop.net/
■主催
(財)九州システム情報技術研究所(ISIT)
九州ギガポッププロジェクト(QGPOP)
■参加者
108名