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プレスリリース

プレスリリース

世界初.ネット配信コンテンツを 一発でプレ視聴・フル視聴! ~新暗号技術を開発~

公益財団法人 九州先端科学技術研究所(研究所長 新海征治)の情報セキュリティ研究室は,2015年10月,映像などのコンテンツの暗号化とそのプレ視聴・フル視聴処理をひとつの暗号の枠組みで実現できる新暗号技術を開発しました.
この新技術は,ネット配信コンテンツのホルダーは宛先ユーザ毎の1個の暗号化キーで処理を行い一度に全部送ってしまえるメリットが,また,ユーザは1回のダウンロードで購入キーに応じ プレ視聴・フル視聴が可能となるメリットがあります.
新暗号技術は 《多変数NTRU》 という数学概念を用いて世界で初めて実現されました.
1回のダウンロードでプレ視聴・フル視聴を切り替えられるメリットは,フル視聴キーからプレ視聴キーを数学的に導出する,という発想で可能となったものです.

注) この研究は総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)平成27年度イノベーション創出型研究開発フェーズII(no. 0159-0016)の委託の一環である.

従来から,秘密情報を複数に分散する秘密分散方式は,暗号化とは独立に知られており,機密データの分散管理や個人情報保護システムに応用されています.また,復号(暗号化された情報を復元)を一部分だけに制限する機能の実現には,共通鍵暗号と公開鍵暗号の組み合わせが用いられており,著作権保護や有料放送の試聴システムなどに適用されています.
今回開発した新暗号技術は,暗号化鍵にあらかじめ数学的階層構造を組み込むことで,必要に応じ全体復号鍵を分割譲渡することを可能にしています.これにより,コンテンツ暗号化データに対し復号可能領域を一部分に制限することができます.ここで,共通鍵暗号の力を借りずに公開鍵暗号のみで実現できることが大きな特徴です.このため,公開鍵暗号方式における暗号化鍵・復号鍵の数学的構造を積極的に活用することが可能となります.結果として,分割譲渡された2つの異なる復号鍵(復号権限)の結合(or)あるいは分割(and)し,さらに譲渡するという,従来にない機能を可能にしています.
今回の新暗号技術は,耐量子暗号の一つとして注目されている格子系暗号のカテゴリでも代表的方式の一つであるNTRUに対し,多変数化・高次元化の数学技術を適用し,更に暗号化・復号の演算を行列計算で行うことに着目することで,実現されました.多くの暗号研究者が,NTRUに対し高速化や安全性強化を行ってきたのに対し,今回の研究は,NTRUの高機能性を明らかにした点が,理論上また実用上も貢献と考えております.

本提案方式について,10月21日から23日にかけて長崎で開催される《コンピュータセキュリティシンポジウム2015》で講演を行います.
■講演日時:10月22日15:00~15:20
■講演会場:長崎ブリックホール,会場C(会議室4, 5)
■シンポジウムWebサイト: http://www.iwsec.org/css/2015/

用語説明
◇耐量子暗号:高い計算能力の量子計算機が実現された後も解読困難な暗号.現在,主流のRSAや楕円暗号は,量子計算機で解読できる.このため,量子計算機でも解読が困難な(耐久性のある)暗号として,耐量子暗号が期待されている.
◇格子暗号:数学概念である「格子」を暗号に応用した,耐量子暗号の候補の一つ.
◇NTRU(N-th Degree Truncated Polynomial Ring):公開鍵暗号の一つであり,1996年にJeffrey Hoffstein, Jill Pipher, Joseph H. Silvermanの三人が設計し学会発表した.同年,NTRU Cryptosystems社が設立され,同社は2000年に米国で特許を取得した.スマホ等の小デバイスにも実装が容易なことを特徴とする.IEEE p1363でも,RSAや楕円暗号に続いて規格化されている.                                                 ◇暗号技術の体系(概略)
公開鍵暗号-+-RSA暗号,楕円曲線暗号
|   +-格子暗号 -+- NTRU –(本新暗号技術) } 耐量子暗号
共通鍵暗号                                           (以上)