ここから本文です
研究室
情報セキュリティ研究室

情報セキュリティ研究室

IACR Blockchainサマースクール他参加報告

IACR Blockchainサマースクール他参加報告

  • 報告者: 松本研究員

IACR Summer School “Blockchain Technologies”

  • 開催日: 2016年5月30日~6月2日
  • 場所: Corfu Imperial Hotel(ギリシャ コルフ島)
  • 主催: IACR(International Association for Cryptographic Research)
  • 参加者数: 約150名

[概要]

暗号関連の学会IACR主催によるBlockchainに関するサマースクールに参加した.BlockchainはBitcoinなどの暗号通貨の中核技術であり,IoTやモバイルへの応用も見込まれる技術である.コルフ島は典型的な欧州のリゾート地であり,欧州外からはまがりなりにもアクセスが容易とは言い難い(アテネから飛行機で約1時間)が,スクールには報告者以外にも日本から複数参加し,また欧州以外からも米国,アジアの他地域からの参加者を集めるなど,盛り上がりを見せた.

[Day 1]

初日最初の講演”Bitcoin overview”(Joseph Bonneau,Stanford Univ.)では,4日間のスクールの導入として,暗号通貨の代表であるBitcoinを下敷きに,その根幹をなすハッシュ関数,ハッシュポインター,マークルツリー,デジタル署名(Bitcoinが用いるのは楕円曲線を用いたECDSA),公開鍵とアドレスの関連などが説明された.

サマースクール会場(開場直後なので人があまりいない)

サマースクール会場(開場直後なので人が少ない)

また”Mining”(Joseph Bonneau,Stanford Univ.)では,miningの現状(CPUからGPU,FPGA, ASICへと競争過熱)が紹介された.現状miningは投資合戦になっており,これを緩和するためのmining pool,またこれに対する攻撃手法などレクチャされた.miningに対する投資は,Bitcoinの将来の価格予測に左右される,という指摘が印象的であった.

夕方は会場ホテル内施設であるプールサイドにてレセプションが行われた.

初日夕方に催されたレセプション

初日夕方に催されたレセプション

 

[Day 2]

Cryptographic e-cash (Jan Camenisch, IBM Research)は,電子マネーに近いモデルを想定している模様.銀行がAuthorityとして機能している世界を扱っていた.

Short Talksのセッションにおいても興味深い発表があった.Giorgos Paanagiota氏からはBlockchainの選択方式GHOSTの提案.Ren Zhang(KULeuven)氏からはSelfish Mining対策について.Hong-Sheng Zhou(Virginia Commonwealth Univ.)からは51%攻撃対策についての発表である.また飛び入り発表Suuno Park(MIT)氏からはProof of Spaceに基づく暗号通貨についての発表が行われた.

[Day 3]

Anonymity in Cryptocurrencies”(Foteini Baldimtsi, George Mason Univ.)は暗号通貨における匿名性を扱うレクチャであり,Bitcoinと互換性を持つmixing/tumbler serviceと,根本から見直した匿名性暗号通貨について論じた.後者の代表としてZerocoinはゼロ知識証明(NIZK)を導入しており,これに 対しZerocashではzk-SNARKsを採用している.

ブレイクアウトセッションは二つに分かれて催され,報告者はIOHKのセッションに参加した.中央銀行モデルを採用したRSCoinと暗号通貨フレームワークScoreXである.ScoreXは後述するIntelのSawtooth Lakeとも競合する技術だが,今後実験などを行うのに活用できそうではある.

[Day 4]

“Underground markets”(Nicolas Christin, CMU)は,既に摘発され廃止されている地下マーケットSilk Road”,およびその追随者について.Silk Road(と,そのエピゴーネン)は,Tor上で活動し,Bitcoinを支払に使うマーケットであり,違法薬物などの売買に使われていた(らしい).地下マーケットの分析は,倫理的に危ない橋を渡っていると思うが,それ故に興味深く,価値がある講演だった.

ランチは開場となるホテルのビュッフェ形式で.テラスでとることができた.

ランチは開場となるホテルのビュッフェ形式で.テラスでとることができた.

 

報告者はこの日の夜の便でアテネに渡り,翌日のワークショップ参加に備えた.

[全体を通して]

特に匿名性に関する議論が印象に残った.また複数の大学/研究所がポスドクのポストを宣伝しており,暗号通貨研究者の人材流動性が高まっている印象(スクールという形式を反映しているのかもしれないが)である.

Workshop on Cryptocurrencies

  • 開催日: 2016年6月3日
  • 場所: Hotel Royal Olympic Athens (ギリシャ アテネ)
  • 主催: ECRYPT-CSA
  • 参加者数: 約30名

[概要]

コルフ島でのスクール終了の翌日,アテネにてワークショップが催された.ワークショップ参加者の9割ほどはコルフ島にも参加していた模様.テーマは同様であり,スピーカーも結構重複していたが,後述するIntelの発表などはスクールのIOHKの発表とも対比させることができ,両方参加した価値が感じられた.

会場はHotel Royal Olympic Athensのパノラマホールであり,ベランダからゼウス神殿を望むことができる(下写真)

[内容]

Cryptocurrencies overview (George Danezis, University College London)は,電子マネーから暗号通貨の概観であり,一部経済学的視点も入ったもの.経済学的な見方は,なかなか知る機会がなかったのでありがたかった.

Technology Industry Views on Blockchain (Claire Vishik, Inte)は,暗号通貨に関するIntelの取り組み,特に,暗号通貨フレームワークSawtooth Lakeの紹介である.この後Microsoftが”Project Bletchley”を公表するなど,この分野は盛り上がりつつある印象である.

ワークショップ会場からはゼウス神殿を望むことができた

ワークショップ会場からはゼウス神殿を望むことができた