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研究室
システムアーキテクチャ研究室

研究・活動紹介(平成28年度まで)

競争力あるシステムLSI 及び組込みシステムのアーキテクチャ、設計プラットフォーム、低消費電力設計支援技術、ならびに、その応用に関する研究

低電圧かつ超低消費電力でありながら高機能なアナログ回路を実現することは、バッテリー駆動の携帯用機器あるいはインプラント型医療機器にとって緊急の課題になってきております。特に近年のスマートデバイスやウェアラブル機器は、環境条件や人体から起電力を得る環境発電素子の開発と共に、急速に市場が立ち上がってきています。しかしいまだにバッテリーの存在を無視できるまで低消費技術が成熟していないのが現状です。
アナログ回路設計は、自動設計も可能になったデジタル回路設計と異なり、トランジスタを素子レベルから積み上げて回路全体の構成と特性を考慮する必要がありまた設計に必要なパラメータも多くあります。さらにアナログLSI の設計では、単に回路の設計だけではなく、システムレベル、ブロックレベル、レイアウト・パッケージまでを考えて性能を確保することが必要です。そこではたった一箇所のばらつきやゆらぎが全体に影響したり、回路の周波数特性などデジタルでは考慮しなくてよい特性までも考慮する必要があるため、ある程度のアナログ回路を組めるようになるには年単位(10年)の経験を要すると言われています。
このような状況で更に上記のような低消費需要に応える為には、従来のミリアンペアレベルの電流ではなく、マイクロアンペアもしくはナノアンペアレベルの電流、すなわちトランジスタのしきい値以下の電流が必要となりますが、トランジスタの電流式がしきい値の上下で電流機構及び表式が異なり連続的でないことや、最適特性なバランスをとれるといわれるしきい値付近で精確な式が得られないことが、低消費電力の設計時に種々の仕様に対する設計指針を持てない状況にありました。本研究室では、上記トランジスタの課題である基礎理論を再構築し、低電圧かつ超低消費電力でありながら高機能なアナログ回路最適化設計を容易にする設計手法の確立と設計者支援ツールの開発を目指した活動に取り組んでいます。

カーエレクトロニクス分野におけるシステム設計技術の応用及びECU (電子制御装置)の開発・利活用の高効率化に向けた活動

車の開発においては、高性能化、高度な運転支援や高機能化、経済性向上(低コスト化、低燃費化)、信頼性・安全性向上、快適性向上や対環境性(排ガス規制への対応)向上等のニーズや社会的要請に応えるため、車のエレクトロニクス化と急速に進んでいます。その結果として車に搭載されるECU(Electric Control Unit:電子制御装置)の担う機能の増大、また、その実現に用いられるソフトウェアが大規模化、複雑化しています。そのためECUの開発に要する期間やコストの増大、あるいは、信頼性の確保への対応が課題となっています。カーエレクトロニクス・プロジェクト推進室では、カーエレクトロニクス分野における設計技術の応用及びECUの開発・利活用化に向けた活動として以下の活動に取り組んでいます。

  • ISITカーエレクトロニクス研究会の主催
  • vECU-MBD WG(virtual ECU Model-Based Development Working Group)の活動の推進

コンピュータを用いた「ものづくり」に必要な機能およびサービスをすべてクラウド上に集結し、オールインワン&ワンストップサービスでクラウド上での「ものづくり」を可能とする wCloud(=Workshop Cloud:工房クラウド) の開発と運用

wCloudは、コンピュータを用いた「ものづくり」に必要な機能およびサービスをすべてクラウド上に集結、オールインワンおよびワンストップサービスで当該クラウド上での「ものづくり」を可能にするシステムと当該システムによるサービスです。wCloudでは以下の2種類のサービスを提供中です。

  • 計算機リソース:クラウドサービスとして「アマゾン ウェブ サービス」を活用して、ユーザに対して「ものづくり」に必要な計算機リソースを提供します。これにより、ユーザは自ら計算機リソースを所有することなく、必要な計算機リソースを必要な時に必要なだけ使用することが可能となり、所有コスト(TCO: Total Cost of Ownership)を低減すると同時に、開発期間(TAT: Turnaround Time)の削減が可能となります。
  • ツールおよび各種コンテンツ:wCloud独自のサービスである「“X”aaS (“X” as a Service)」により、ユーザに対して「ものづくり」に必要な様々なリソース「X」を提供します。このリソース「X」としては、ツール、モデル、データ、ノウハウ、トレーニング用コンテンツ、等が用意されています。これにより、ユーザは自らこれらリソース「X」を自己調達することなく、必要なリソース「X」に容易にアクセスして「ものづくり」に活用することが可能となります。

ISITでは、平成25年度よりwCloudのサービスを一般公開し運用を行っています。wCloudの情報はwCloudのWebサイト(http://www.workshopcloud.org/)で公開しています。(2017.1終了)

大学の教員、学生、研究者が求める機能およびサービスをすべてクラウド上に集結、オールインワン&ワンストップサービスでクラウド上での学習・教育・研究を可能とするLab.Cloud(=laboratory Cloud:ラボクラウド)の開発と運用

Lab.Cloudは、教師、学生、研究者が求める機能をオールインワン&ワンストップサービスで提供するサービスです。Lab.Cloudでは以下の3種類のサービスを提供しています。

  • MOOC&SPOCプラットフォーム:ビデオ教材(講義動画)視聴、クイズ形式の小テスト、掲示板によるQ&Aやディスカッション、等の標準的なMOOC&SPOCプラットフォームを提供します。教師は自身の講義を本MOOC&SPOCプラットフォームにより簡単に受講生に提供することが可能となります。また、受講生は時間や場所を気にすることなく、講義動画を視聴、小テストに答えたりレポートを提出、さらには他の受講生とオンラインでディスカッションしながら自分自身の能力を主体的に向上させて行くことが可能となります。
  • 仮想的な「演習・実習・実験室」/「研究室」環境:上記のMOOC&SPOCは、通常の講義のためにWeb上に設けられた「教室/講義室」に相当します。「Lab.Cloud」はさらに、各種コンピュータツールを用いて演習・実習・実験を行うための仮想的な「演習・実習・実験室」環境、あるいは、研究のための仮想的な「研究室」環境をクラウド上で提供します。計算機リソースは「アマゾン ウェブ サービス」により、また各種コンピュータツールは「Lab.Cloud」が提供する「マーケットプレイス」上で有償/無償で入手して利用します。さらに、一つの「演習・実習・実験室」ないし「研究室」に属する教師や学生、受講生間のコミュニケーション、コラボレーション、コンテンツ共有を円滑に行うためのSNS (Social Network Service)も提供します。
  • アニメビデオ教材(講義動画)作成:有限会社BONDの情報番組制作ツール「スマートアバタークリエイター」により、MOOC&SPOCで提供すべきアニメビデオ教材(講義動画)を教師が容易に作成できるよう支援します。この「スマートアバタークリエイター」を用いれば、面倒なビデオ撮影を行うことなく、教師の代わりに「スマートアバター」が音声合成で発声する高精細・高品質の音声付き動画が簡単に作成できます。教師は、パワーポイント等で作成した講義資料および講義で話すべき内容のテキストを用意し、あとはクラウド上で「スマートアバタークリエイター」による簡単な編集作業を行うだけで、短時間かつ低コストでビデオ教材を完成させることが可能となります。

ISITでは、2014年3月よりLab.Cloudのサービスを一般公開し、運用を行っています。また、本年10月より国立大学法人九州大学大学院システム情報科学研究院・学府および工学部電気情報工学科の新しい教育用計算機システムの一部として提供しています。Lab.Cloudの情報は、Lab.CloudのWebサイト(http://www.laboratorycloud.org)で公開しています。(2017.3終了)

ビッグデータとオープンデータの収集・蓄積・分析・活用を誰でも一元的に行うことの出来るデータファームコンプレックス「BODIC.org」の開発と運用

近年、ビッグデータ利活用の需要が高まっていますが、そのビッグデータを収集し蓄積・分析するための環境を自前で構築するのは技術面、コスト面でも容易ではありません。また、蓄積したビッグデータを第三者に提供したり、さらには一般に公開するのも同様の課題を抱えています。一方、ビッグデータとは別の潮流として、政府や地方自治体が有する各種の情報をオープンデータとして一般に公開し、それを民間による行政サービスやビジネスに利活用しようという動きがあります。このオープンデータサイトの構築・運用についても、上記のビッグデータが直面しているのと同じ課題が存在しています。このような現状を踏まえ、BODIC.orgでは以下のサービスをパブリッククラウド上で提供します。

  • データファーム(Data Farm)プラットフォーム:複数のタイプの異なるデータ収集・蓄積・分析・活用環境を「データファームプラットフォーム」として用意。データ提供者は、所有するデータの種類や利活用の用途に応じて最適なプラットフォームを選択、自身のデータファームとして運用可能。
  • データマーケットプレイス(Data Marketplace):データ提供者は自身のデータファーム上のデータをデータマーケットプレイスに出品するだけで、データ利用を希望する者(データ利用者)に対して有償・無償で当該データを提供可能。データ利用者は、有償で購入したデータ、無償で獲得したデータ、あるいは自分自身が所有するデータ等々をマッシュアップして、ビッグデータ、オープンデータを自由自在に分析・活用可能。
  • データ分析ツール:各種のデータ分析ツールをクラウド上に用意。データ利用者はデータをダウンロードすることなく、クラウド上でデータ分析可能。
  • データアクセスインタフェース:データ利用者が情報システムやアプリケーションソフトウェアからBODIC.org上のデータにアクセスするための各種API (Application Programming Interface)を用意。BODIC.orgから収集した各種データをマッシュアップして様々なサービスをデータ利用者は第三者(サービス利用者)に対して提供可能。

データファームプラットフォームとしてはまず、センサーデータ等の時系列データを収集・蓄積・分析するための「TeaScoop」、および、オープンデータを公開・活用するために「TeaPot」の2種類が提供開始されます。さらに、それぞれの上で以下の2つのデータファームの運用が始まります。BODIC.orgについての情報は、BODIC.orgのWebサイト(http://www.bodic.org)で公開しています。(2017.3終了)

DSS4J(Data Scientist School for Japan)によるMOOC(Massive Open Online Course)の開講

近年、産業界においても、ビッグデータやオープンデータを利活用化が喫緊の課題となっている。ビッグデータやオープンデータの利活用では、ビッグデータやオープンデータに対応するITシステムの知識や経験に加え、データの分析技術、市場への適用に必要な知識や経験が求められる一方、従来、こうした知識や経験に対応する教育環境が整備されていないことから、ビッグデータやオープンデータの利活用化に必要な人材の不足と人材の育成が課題となっています。
DSS4Jは、データサイエンティスト育成のための教材開発、および人材育成において、全国的に連携を図り、関連機関や関連企業での実践的活動に繋げる事を目的とするプロジェクトです。DSS4Jでは、ビッグデータやオープンデータの教育として以下のコースをMOOCとして開講しました。MOOCはオンラインで公開された無料の講座を受講し教育を受けられる教育サービスです。

  • 「ビッグデータ利活用事始め」
  • 「Rを用いたデータ分析基礎」

「ビッグデータ利活用事始め」は、総務省が平成23年度〜平成25年度に開発した「高度ICT利活用人材育成カリキュラム」に沿ったもので、今後の人材育成が求められているクラウドやビッグデータ分野を対象にその利活用スキルを習得することを目的にしています。また、「Rを用いたデータ分析基礎」はデータ分析用のツールとして世界中で広く用いられているRと呼ばれるツールを実際に使いデータ分析を行うためのスキルを習得することを目的としています。
上記のコースの講義動画はすべて、有限会社BONDの番組製作ツール「スマートアバタークリエイター」を用いて、アニメーションとして作成しました。これにより、通常の実写による講義動画と比べて、明瞭で無駄のない効率的・効果的な構成となっています。また、これらのコースは「Lab.Cloud MOOC&SPOC」上で誰でも無料で受講することができ、受講生は時間や場所を気にすることなく、講義動画を視聴、さらには他の受講生とオンラインでディスカッションしながら自分自身の能力を主体的に向上させて行くことが可能となっています。

エクサスケールに向けた次世代スーパーコンピュータの要素技術の開発

次世代スーパーコンピュータ開発支援室では、「次世代スーパーコンピュータのための基盤要素技術の研究開発」をテーマとして、日々需要が高まりつつある高性能スーパーコンピュータ(以下、スパコン)に向けた革新的な要素技術の研究開発を進めています。
現在、新世代のスパコンとして、ペタフロップス級の1,000倍の能力を持つ、エクサフロップス(100京演算/秒)級のスパコン(以下、エクサスパコン)の研究開発が世界中で展開されており、2020年を念頭に日本でも本格的な開発が始まろうとしています。このようなスパコン開発では、高性能化、低消費電力、低故障率をはじめとする多くの困難な技術課題が浮き彫りになっており、今までに無い新しい発想に基づく基盤要素技術が求められています。また、このような大規模システムが持つ性能を十分に発揮させるには、今まで以上に洗練されたプログラムの最適化技術や高度な通信処理技術が重要になっています。
具体的には、最近のCPUは多数のコアを搭載し、さらに各コアは複数の演算器を持っていますが、これらのコアや演算器を遊休させることなく効率良く動作させるためには、まだまだ人手によるプログラムのチューニングが必須となっています。また、スパコンは数万から数十万台の計算ノード(CPUやメモリからなる処理要素)間で相互に通信を行いながら処理を進めます。インターコネクトはこの通信を効率良く行うスパコン専用のネットワークであり、通信性能の良し悪しはシステム全体の性能に大きな影響を与えます。したがって、円滑な通信が行えるように、インターコネクトにおける通信経路や通信タイミングの緻密な最適化もこれからのスパコンにとって今まで以上に重要となっています。そして、このような高性能の計算機システムを活用するためには、実行するアプリケーションをシステムに合わせて高度に最適化する技術がますます必要となってきます。このような背景のもと、次世代スパーコンピュータのキーテクノロジとなる基盤技術の研究開発や、技術課題についての調査検討を行っています。